産学連携
金沢工業大学(KIT)様
2024年度
別川製作所は2024(令和6)年度、金沢工業大学(KIT)との産学協同プログラム「コーオプ教育」に約5カ月間にわたって取り組みました。コーオプ教育とは企業が学生に実践的な学びの場を提供するもので、当社での実施は2021(令和3)年度以来2回目。今回は情報フロンティア学部メディア情報学科3年の井上輝星さんを企画開発室の期間限定の「新入社員」として迎え入れました。
開発課題は「離れた場所からでも、現場の疑似空間(Meta)でリアルタイムに機械運転・設備管理を行う」というもの。作業者の経験年数に関わらず、通常運転時はもちろん点検やトラブル発生時も、リモートでその状況に対応・対処できるよう、3Dビューアーを利用したMetaシリーズの開発に取り組みました。
デバイスはXRグラスの「MiRZA(ミルザ)」、360°画像の撮影は「RICOH THETA(リコー・シータ)」、空間画像を操作するアプリの開発ソフトはメーカー推奨のものと、類似のオープンソースのそれぞれについて井上さんが技術調査し、その結果、ソフトは画面操作の優位性からオープンソースを採用しました。このオープンソースは3Dの画面上にアイコンやツールチップ(注釈)を「常時」表示させる機能を有し、グラスを装着した作業者は「メモ」や「チャット点検」など必要な作業のアイコンを直観的に画面上から選ぶことができるので、効率の良さも魅力です。
そして生まれたのが「360°ぐるりビジョン」と「どこでもビジョン」です。「ぐるり」は360度で撮影された現場の画像をストリートビューで移動しながら、特定の機械や設備をグラス画面上の仮想空間で確認し、点検なども行えます。「どこでも」は複数の遠隔地の画像情報をグラス上に同時に映し出し、運転状況の確認や点検のオペレーションの進捗に合わせて最大6画面の切り替えが可能です。「最大6画面構成」のキーワードを打ち出せたのは、井上さんの学生ならではのひたむきな技術調査の結果によるもの。「ぐるり」「どこでも」のいずれも、企画開発室が手掛けるCreerプラットフォームと連携し、パソコンやタブレットでリアルタイムデータと過去データとの比較・分析、図面・マニュアル・カメラ映像の確認も可能となります。
前回のコーオプ教育で開発した対話型AIチャットBotアプリの技術は、その枠組みに企画開発室が改良を加え、当社工場への導入を達成しています。今回の技術も実用化に向けて動作検証を進めます。また、コーオプ教育に加えて技術開発に興味のある学生をアルバイトで採用するなど、大学や学生とのつながりを今後の開発に活かしていきます。
大澤学長 | 企画開発室の皆さんがプロの見識でたくさんのディスカッションやレビューに応じてくださったとのことで、井上さんにとって大変貴重な経験となりました。海外では、学生が実務経験を積みながら授業で学んだことを業務につなげるWork-Integrated Learning(WIL)が注目されています。学生が一般企業を柔軟に出入りして学びを深め、企業さんにも学生との協同に価値を感じていただけるなら、非常にありがたく、コーオプ教育の新しい可能性を見出していただいたように思います。 |
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川島社長 | 今回のテーマのXRグラスは、どこからでも現場の巡視や点検でがき、実際に働く人も作業しやすくなるだろうなと改めて感じました。企業側におけるコーオプ教育のメリットの一つは、自由な発想を持つ学生さんとのディスカッションで、新しいアイデアが生まれることです。前回のチャットBotを既に工場に導入しているように、今回のXRグラスも、コーオプ教育を通して得た成果物は当社の事業にしっかりと貢献していただけるものだと思いますので、今後もKITさんとの連携を深めていきたいと考えています。 |
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井上さん | 企業で技術者として働く人から直接学べる貴重な機会だと思い、コーオプ教育に参加しました。ソフトウェアを使ったDXにもなじみが薄かったので、面白そう! という期待感が大きかったです。大学では遊びと学びを組み合わせた子ども向けゲームを作るプロジェクト活動に取り組んでいます。プログラミングの経験はありましたが、webアプリの開発は初めて。使用言語を学ぶ基礎からスタートしました。印象的だったのはディスカッションとレビューの頻度の多さと内容の濃さです。技術調査を基に自分なりにデモをいくつか作成して提案しましたが、企画開発の経験豊富な高筒さん、中富さんがそこから次々とアイデアを繰り出されていて、圧倒されました。 現状はまだ実装には至っていませんが、今後、ぐるりビジョンは3D画像が5分単位でリアルタイムに切り替わるシステムも搭載する予定です。 常にエンドユーザーの使い勝手を意識する技術開発の心得や、限られた期間の中でカタチにするマネジメント力などコーオプ教育でたくさんの学びを得ることができ、大学の授業や将来にも活かしていきたいと思います。 |
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大澤 敏氏
金沢工業大学
学長
川島 直之
株式会社別川製作所
代表取締役社長
井上 輝星さん
金沢工業大学
情報フロンティア学部メディア情報学科3年