産学連携
金沢工業大学(KIT)松井くにお研究室 様
2022年度
企画開発室では2022(令和4)年度、金沢工業大学(KIT)松井くにお研究室と共同で、複数の場所の映像や情報を同時に認識しながら実際の現場での作業を支援するスマートグラスアプリを開発しました。開発のテーマは「スマートグラスを活用した新しい働き方」。スマートグラスを着けた作業者は、ハンズフリーで点検や工事といった作業が可能になるほか、別の現場にある機械や機器との調整・連動性の確認などを少人数で行うことができ、効率的なオペレーションを実現します。
具体的には、作業者はスマートグラスのアプリから当社が独自に構築したCreerプラットフォームにアクセスし、クラウドを経由して遠隔現場のカメラ、センサー、PLCの映像や情報をリアルタイムで入手。それらも照合しながら実際の現場でタイムリーな判断と作業遂行が可能になります。また、現在のリモート立ち会いはタブレット端末で作業状況を撮影する人員が必要ですが、スマートグラスを使えば将来的にそれも不要となります。例えば、検査員がZoom等オンラインでつなげたまま製品検査を実施することで、お客様は検査員の視点でチェックをすることができるなど、幅広い活用が期待できます。
松井研究室のゼミ生・山本雄万さん(4年)は、スマートグラスに搭載するアプリをゼロから開発。スマートグラスとしてVuzix M400(OS:Android)を採用し、Web APIを使ってCreerプラットフォームからスムーズに情報を引き出せるシステムを構築しました。スマートグラスのディスプレイは4画面で構成し、作業と並行しながら関連映像や文字情報など相対的に確認できます。アプリでは、作業者の視覚的な負担を軽減するため、文字の大きさ、背景色を工夫し、“見えやすさ”も追求。操作にはスマートグラスのサイドに付いたボタンを使い、押す回数と長押し時間の組み合わせで複数の機能を迅速に切り替えられるようにしています。
KITと当社では今後もこの研究を発展させていく予定で、音声認識や画像の入れ替え、ズームといった機能の追加を目指しています。
山本さん | 大学内での研究とは違っていましたね。現場の声をヒアリングして開発を進め、途中で何度も意見を聞いて改善し、実際に使った感想を聞くという経験は初めてでした。大変でしたが、課題を一つずつ乗り越えていく充実感がありました。 |
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松井教授 | 企画開発室から期限を決められ、それに向けてスケジューリングして、成果を出していく。企業と緊張感を持って開発できること は共同研究の醍醐味でもありますね。 |
山本さん | 操作性を上げることに苦労しました。タッチパッドだと操作性が悪いので、グラス側面の上部に付いた3つのボタンを使って機能の切り替えができるようにし、画面の切り替え時間を短くする工夫もしました。 |
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松井教授 | OSのAndroidにしても、これまで扱ってきたものと違うので、そこに機能を持たせようとすると、分からないことがでてきます。試行錯誤の連続だったと思います。 |
山本さん | アプリ開発に必要なインターフェイスのWeb APIを使うのも初めてで、基礎から学んでいく感じでした。それを理解してからは、開発がスムーズに進みましたね。 |
松井教授 | 大学内で学生がスマートグラスを付けて授業を受ける時代がくるかもしれません。 発想を広げて用途を考え、スマートグラスを進化させていければと思っています。 |
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山本さん | 松井先生が研究している、スマホをかざすと音声案内をしてくれるコード化点字ブロックと組み合わせても面白そうです。スマートグラスならスマホをかざす必要がないので、より便利な使い方ができそうです。 |
松井 くにお教授
博士(工学) 金沢工業大学工学部情報工学科
山本 雄万さん
金沢工業大学工学部情報工学科4年