産学連携
金沢工業大学 徳永 雄一 教授
2026年度
金沢工業大学(KIT)の扇が丘キャンパスに7月、最先端テクノロジーを駆使し、地域課題の解決推進を掲げる「地方創生研究所サテライトラボ」が新設されました。企画開発室のミッションと共鳴する部分が多く、今回、ご縁があって、同所を拠点に研究活動する情報デザイン学部経営情報学科の徳永雄一教授との共同プロジェクトが始動しました。9月下旬、同所で開かれたキックオフミーティングでは、徳永研究室と企画開発室それぞれがこれまでの研究や開発事例を報告し、今回の共同プロジェクトの方向性を共有しました。
ミーティングではまず、徳永教授の専門であるデジタルツインとメタバースを使った仮想空間の形成を解説。現実世界のデータを元に、仮想空間内に同じものを複製するデジタルツインと、人が仮想空間に入り込んで状況を動かすメタバースを合体させることで、「仮想空間にいながら現実のモノを見て判断、操作できる」現実を作り上げることをテーマに掲げている、とのお話でした。現時点では製造、建設、モビリティ、エネルギーの各分野での課題に対し研究を進めており、例えば建設現場では、作業員が撮影した現場写真を即席で組み合わせて仮想空間を作成。そこにCG演出「ゲームエフェクト」の技術で現場土壌のデコボコ感や、傾斜等が視覚的に分かるように示しました。経験豊富なベテラン作業員はリアル現場に立てば感覚的に分かる情報かもしれませんが、若手作業員からは現場に行かなくても効率的に情報収集ができると好評を集めたそうです。
徳永教授は、今回の共同プロジェクトでは仮想空間内でのリアル現場のエネルギーの見える化、ゲームエフェクトを使った臨場感のある情報提示、メタバースの実装を掲げます。配管やコードを経由していたり、デジタル信号など物理的には見えないモノ、情報の流れを視覚化。さらにそれらの事象が複合的に発生する状況でのエネルギーの流れを見える化し、経験の有無に関わらず、作業者が適切に対応するための有力な判断基準として活用できるようにしたい、としています。
また、単一空間のメタバースとは少し異なる複合空間の「マルチバース」の実装も提案いただきました。遠隔で情報を得る場合、実時間とのタイムラグが発生します。それを解消するため、マルチバースではリモート映像と一緒に「少し先の未来の情報」を複数パターン確認できるようプログラムを設計します。たくさんの未来予測の中から作業者が「直感的」に行動を判断し、実行することが可能になります。大雨の際に浸水や河川の氾濫予測を視覚的に見えるようにし、避難行動を促すといった防災面で注目が高まっている技術ですが、製造現場にも応用できます。
続いて、企画開発室の高筒正義室長が、企画開発室が取り組んでいるバーチャルプラントの構築、XRグラスやVRゴーグルを使った「ぐるりビジョン」「どこでもビジョン」を紹介しました。徳永教授との共同プロジェクトでは、エネルギーの可視化により、ぐるりビジョン、どこでもビジョンの用途拡充を検証し、マルチバース内での未来予測によるスムーズな現場管理にもつなげていきたい考えです。今回の共同プロジェクトにより、専門性の高い検証を積み重ねる学術的なエッセンスが加わって、企画開発室が提案するバーチャルプラントの有効性を数値的に示すことが叶えば、社会への浸透スピードを加速させられるはず。そんな大きな期待を持ってこの共同プロジェクトに取り組んでいきます。
| 徳永教授 |
別川製作所さんがプロダクト設備の会社ですので、最初はこちらの研究メソッドを提供するのかなとお話をしていたら、もう最新の開発に取り組まれていて、もしかして私たち負けてる!? とヒヤヒヤしました(笑)。でも、当研究室が掲げるマルチバースの概念をお伝えした時に、とても前向きな反響をいただき、見据えている未来の形が非常に近いことに運命を感じました。まずは現場、遠隔地、それぞれのオペレーターが仮想空間内でも「直感的」に作業できるように、現場の匂いや音、稼働の様子や雰囲気がリアルに視覚化されるように開発していきます。 いま、米国ではAIの台頭によって事務職が失職し、いわゆる「ブルーワーカー」が高給職になってきています。日本もいずれそうなるのは時間の問題。その時に、現場職も事務職もバランスよく機能し続ける未来であるために、今回の共同プロジェクトのようなAIと上手に共存するためのシステム開発の必要性を強く感じています。 |
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| 川島社長 |
KITさんとはこれまでにも、共同研究やコーオプ教育、学生さんにアルバイトで企画開発室の開発メンバーに加わっていただくなど、さまざまなプロジェクトに一緒に取り組んできました。その度に、学生の皆さんの柔軟な発想に刺激を受け、当社の開発は着実に進化を続けることができています。 当社は個別受注生産による電気設備、システム開発を生業としています。お客様からのオーダーには、全力でお応えしたいとの思いで75年にわたり事業を展開してきました。AIを取り入れた製品を、とのリクエストがあれば、お客様の製造環境にぴったりと合うシステムを提供したい。そのための細かい調整には現場での泥くさい作業が必要になりますが、徳永研究室さんの力をお借りして、そういった作業も迅速に、そして実利に直結できるようなノウハウを習得し、AIを取り入れた個別受注生産のプラットフォームを形成していきたいと考えています。 |
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徳永 雄一 教授
博士(工学) 金沢工業大学
情報デザイン学部 経営情報学科
川島 直之
株式会社別川製作所
代表取締役社長
【関連ページ】
金沢工業大学 地方創生研究所サテライトラボの記事:https://www.kanazawa-it.ac.jp/kitnews/2026/0706_cocreation-nexus.html
徳永雄一 研究室:https://kitnet.jp/laboratories/labo0211/